犯罪・刑事事件の解決事例
#建物明け渡し・立ち退き

債務不履行解除と建物明渡強制執行事案

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神田 元 弁護士が解決
所属事務所神田元経営法律事務所
所在地東京都 港区

この事例の依頼主

年齢・性別 非公開

相談前の状況

相談者は、中央線沿線に賃貸マンションを所有して全室賃貸していましたが、そのうち1室の賃借人が既に5か月以上賃料を支払ってこず、なかなか連絡も取れず困っているということで、何とか明渡してもらえないかという相談がありました。

解決への流れ

まず、賃借人に対して、滞納している賃料を遅延損害金を合わせて直ちに支払うよう催告し、催告期限までに支払わないのであれば、賃貸借契約を解除するという内容証明を送りました。内容証明郵便は賃借人に受領されたようですが、催告期限を過ぎても一向に支払いも連絡もありません。そこで、東京地裁に債務不履行に基づく建物明渡請求事件を訴訟提起しました。第1回の口頭弁論期日を迎えても、被告である賃借人が出頭しませんでしたので、欠席判決となり、原告である当方の請求はすべて認容されました。仮執行宣言がついていますので、早速東京地裁の執行官室に強制執行を申し立てました。強制執行の断行日には。執行業者に4トントラック1台を用意してもらい、執行官と当該部屋に臨みましたら、今度は元賃借人も在室しており、観念して強制執行を受けることになり、短時間の間に部屋内の動産類を全て運び出して、直ちに部屋のカギを新しく付け替えて、断行は終了しました。

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神田 元 弁護士からのコメント

建物賃貸借において、よく契約書には「賃料の支払いを1回でも遅延したときには、契約は解除され、直ちに部屋を明け渡すものとする。」というような条項を見受けますが、1回程度の賃料不払いでは裁判所は、明渡認容判決を出しません。最高裁は、建物賃貸借は、賃貸人・賃借人間の高度な信頼関係に基づくものであるから、両者の信頼関係が破壊されたと認めるに足りる程度までの債務不履行がなければ、賃貸借契約の解除を認めないという法理を示しました。これを信頼関係破壊の法理と言います。では、どの程度の債務不履行があれば信頼関係があると認められるかについては、賃料不払いについてはやはり3か月以上の不払いが認められなければ信頼関係破壊とまで言えないかと思われます(もちろん、絶対3か月以上必要というものではなく、何度も1回、2回程度の不払いを繰り返していたというような事情があれば、裁判所も信頼関係破壊を認めたケースもありました。)。本件で言えば、相談を受けた時点で、既に5か月以上の賃料不払いが継続しており、大家たる相談者から何度も督促しても無視をしてきたというような事情なども加味すれば、十分両者間の信頼関係は破壊されたものと言えましょう。今回は欠席判決でしたので、裁判所も実質的な判断はしませんでしたが、審理したとしても多分同様の判断をしたものと思われます。さて、元賃借人に対して明渡認容の判決が出て仮執行宣言がついていましたら(もちろん、判決が確定してからでも)、直ちに、東京地裁の執行官室に建物明渡しの強制執行を申し立て、1回目の執行日が決まりました。1回目の執行日は、いわゆる催告執行日と言われるもので、元賃借人に対して執行官から任意での退去を促すものですが、当日、元賃借人はおらず、執行官が次は実際に強制的に建物明け渡しの強制執行を行うといういわゆる断行日を書面で室内に掲示して催告執行は終わりました。ケースによっては、断行までに至らず、元賃借人が任意に荷物を運び出して終了するということもありますので、催告執行日に元賃借人と話し合いができればベターです。強制執行が断行となっても執行官が自らが建物から動産類を運び出してくれるわけではありませんので、申立側で執行業者を手配する必要があります。執行業者は、動産類の運び出しを行ってくれるほか、処分すべき動産類についての手配もしてくれるのですが、短時間で強制執行を終わらせる必要もあり、通常の引っ越し業者よりも費用が高くなることには注意が必要です。