この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
Aさんは、母親の遺産分割で兄弟と折り合いが付かずにいました。遺産分割では、遺産の範囲とその評価、そして、分け方が問題となりますが、Aさんはそもそも遺産の範囲が確認できずにおり、預貯金の資料なども揃わずにいました。また、生前に母親の遺産を兄弟が管理していたところがあり、兄弟が勝手に預貯金の一部を使い込んでいるようにも思われました。そのような状況で、自分で対応することに限界を感じ、弁護士に相談に来られました。
解決への流れ
弁護士は、Aさんからこれまでの経緯や母親の遺産などについて、丁寧に聞き取りをしました。また、Aさんがすでに持っておられる預貯金の資料なども全て目を通しました。そうしたところ、確かに、他にも遺産があるように思われ、また、使い込みを疑われる状況でした。そこで、弁護士は、正式に委任を受けた後、速やかに相手方との協議に着手しました。相手方は、今までの経緯を感情的に述べる一方で、遺産の範囲については曖昧な話をしていました。そこで、弁護士から、裁判手続きになれば長い時間をかけて事実を確認することになることなどを伝え、素直に事実を話して、冷静に協議するよう説得しました。相手方も弁護士からの説得で、遺産の範囲や使い込んだ額をかなり認めてきました。そして、最終的には、今ある遺産の全てをAさんが受け取ることで合意するに至り、Aさんは想定していたよりもはるかに多い遺産を取得することになりました。
遺産分割では、遺産の範囲と評価、その分け方という大きく3段階に分けて進めることになります。Aさんの場合には、そもそもの遺産の範囲が不明な状況であり、その先の評価や分け方にも話が進まない状況でした。そのような中で、弁護士が粘り強く交渉した結果、最終的には、遺産の範囲を迅速に確認することにより、Aさんにとって、有利な内容により合意することができました。これらの流れを3か月程度で迅速に進めることができた結果、親族間で不必要な感情的議論を省いて、建設的な協議を進めることができたといえます。遺産分割では、なかなか先々が見通せずに、気が付くと過去の親族間の諍いなどを理由に、不必要な感情的議論になりがちです。本件は、そのようなことにならずに、円滑に解決ができた良い一例ということができます。