この事例の依頼主
60代 男性
風俗店を利用した際に、相手方より他者に見せないことを前提として動画の撮影許可を受けていたところ、撮影後、相手方に無断で動画(相手方の裸体)を掲示板サイトへ投稿してしまい、後日、相手方代理人(弁護士)よりリベンジポルノ防止法違反および名誉権の侵害に当たる等として1000万円の損害賠償請求の連絡を受けていた案件。
まずは問題となった動画を確認したいところではあったが、相談時に既に消去されており、当職では確認できなかったため、依頼者より動画の撮影に至った経緯、動画の内容、投稿した際の状況などの細かな聞き取りを行いました。そうしたところ、被写体である相手方は目隠しをしている状態であること、動画とはいっても数秒程度の短いものであること、投稿の際には動画以外には何らの文字も上げていないことが判明しました。そこで、そもそも第三者が被写体を判別できない(誰なのかがハッキリしない)動画であるため、権利侵害に必要な「同定可能性」の要件を満たしていないとの主張を展開し、大幅な減額交渉を開始しました。相手方からは、依頼者の認識とは異なる事実関係を列挙され、同定可能性の要件を満たすとして、依然として1000万円の支払を求められ、またリベンジポルノ防止法および刑事事件としての名誉権侵害に当たるものとして刑事事件化を暗に示してきましたが、権利侵害の要件を満たさないこと及び過去の裁判例を参照として上げ、本件よりも悪質性の高い案件ですら1000万円という判断はなされていないとして、粘り強く減額交渉を続けました。それでも、なかなか相手方の提示金額は下がってこなかったため、最終的には当方が考える最大限の解決金を提示し、それでも合意できない場合は、裁判で対応するとの強気の交渉を行いました。そうしたところ、相手方が当方へ歩み寄り850万円の減額に成功する形で合意することができました。
損害賠償の連絡を受けた際、多くの案件において、請求者は被害を大きく見せたがる傾向にあるため、実際には要件を満たさない名誉棄損やリベンジポルノなどの権利侵害があることを謳い、損害額を大きく見積もってきがちです。そのため、①権利侵害があるのか、無いのか、②権利侵害があるとして、その種類は何なのか、③慰謝料、損害額として認められる相場は幾らなのか、を適切に判断する必要があります。また、名誉棄損、リベンジポルノは刑事事件化される可能性もゼロではないため、相手方の温度感や刑事事件化される可能性の程度にも配慮した交渉が必要です。ただ、必要以上に刑事事件化や訴訟提起されることを恐れていては足元を見られますので、案件によっては毅然とした態度で交渉することが求められます。本件は、法的なレベルでは強気の主張を展開しつつ、相手方の感情に配慮した形にて交渉できた結果、大幅な減額に成功すると共に、刑事事件化や訴訟化されるリスクを上手く回避できた案件だったと考えます。なお、本件は更なる減額交渉も可能な案件であったと考えますが、穏便かつ早期に解決したいというご依頼者様の強いご要望により、この結果となりました。