この事例の依頼主
70代 女性
相談前の状況
ご相談者様は,事故により歯を3本失いました。その他負傷部位もありましたが,完治し,問題は歯の治療費(インプラント治療)と後遺障害慰謝料でした。相手方保険会社はインプラントによる治療費を認めなかったため,治療中ではありましたが,紛争に発展することが予想できたため,示談交渉の段階になった場合に備え,ご相談に来られました。
解決への流れ
治療費については,インプラントの費用も治療費に含めることで合意しました。また,ご相談者様は歯が3本折れたものの,事故前から14本以上の歯を失っていたため,自賠責上は後遺障害非該当とされていました。しかし,自賠責上は非該当になったとはいえ,仮に事故前に失っていた歯がなかったとすれば,14級の等級認定を得られたのであり,自賠責の等級認定に慰謝料額が拘束されるのは不合理であることを主張しました。その結果,歯を3本失ったことを考慮した慰謝料額を算定して示談解決することができました。
歯牙障害については,自賠責の後遺障害等級認定が実際の精神的苦痛を反映していないと思われるものがあります。例えば,事故前に14本以上の歯を失っている状態から,事故によって歯を10本失ったとしても,自賠責上は後遺障害に該当しないのです。しかし,そのような結論が不合理なのは明らかで,示談交渉の際にはその点を強く主張しました。歯牙障害に限らず,裁判所による後遺障害の判断に自賠責保険の等級認定の結果が大きく影響することは確かですが,裁判所の判断は自賠責の判断に拘束されるものではありません。よって,自賠責の判断する後遺障害等級認定と現実に発生した障害による仕事・生活への影響がかけ離れている場合には,現実に即した後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を主張していくべきでしょう。