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スルガ銀「業務停止命令も十分想定される」 元金融庁職員の弁護士が深読み
2018年09月17日 10時07分

「かぼちゃの馬車」など不動産への不適切融資問題で、スルガ銀行では創業家出身の岡野光喜会長をはじめ、同じく代表権をもつ米山明広社長、白井稔彦専務もそろって退任し、計5人の取締役が引責辞任することが決まった。

第三者委員会がまとめた報告書(要旨)は、「偽装を黙認した融資業務を行うことに多くの営業職員が関与し、かつ、一部では営業職員自らが偽装に積極的に関与していたものと認められる」と指摘した。

また、「一部の偽装行為については、そもそも所属長が直接関与していたことが認められる」とし、経営幹部においても会長と社長、社内監査役らに「善管注意義務違反」があったと認定。この問題の責任が現場担当者レベルにとどまらないことを明確に示した。

今後は、金融庁による行政処分や警察当局による捜査がどう進むのかに注目が集まりそうだ。第三者委が認定したことも踏まえ、どのような展開が考えられるのか。金融庁に勤務経験がある大和弘幸弁護士に、第三者委の報告書の意義とともに聞いた。

「かぼちゃの馬車」など不動産への不適切融資問題で、スルガ銀行では創業家出身の岡野光喜会長をはじめ、同じく代表権をもつ米山明広社長、白井稔彦専務もそろって退任し、計5人の取締役が引責辞任することが決まった。

第三者委員会がまとめた報告書(要旨)は、「偽装を黙認した融資業務を行うことに多くの営業職員が関与し、かつ、一部では営業職員自らが偽装に積極的に関与していたものと認められる」と指摘した。

また、「一部の偽装行為については、そもそも所属長が直接関与していたことが認められる」とし、経営幹部においても会長と社長、社内監査役らに「善管注意義務違反」があったと認定。この問題の責任が現場担当者レベルにとどまらないことを明確に示した。

今後は、金融庁による行政処分や警察当局による捜査がどう進むのかに注目が集まりそうだ。第三者委が認定したことも踏まえ、どのような展開が考えられるのか。金融庁に勤務経験がある大和弘幸弁護士に、第三者委の報告書の意義とともに聞いた。

●多くの不正行為、内部統制も崩壊

ーー第三者委の報告書についてどのように受けとめていますか

「9月7日に公表された第三者委の調査報告書は、320頁を超える大部のもので、一連の不適切融資問題について、どのような不正行為が行われたか、それらがどのような原因によるものかを多角的に分析しています。

報告書では、『書類の偽装が収益不動産ローンの全般に蔓延していた』『偽装を黙認した融資業務を行うことに多くの営業職員が関与し、かつ、一部では営業職員自らが偽装に積極的に関与していた』などの事実認定がなされ、『スルガ銀行においては、極端なコンプライアンス意識の欠如が認められ、統制環境(企業風土)の著しい劣化があったと言わざるを得ない』と断じています。

金融機関としてはおよそ考えられない多くの不正行為が暴かれ、内部統制も崩壊していたという衝撃的な事実が明らかにされました」

ーー第三者委の認定を踏まえ、今後、金融庁ではどのような処分が想定されそうでしょうか

「報告書では、厳しい営業ノルマに基づく無責任な営業推進態勢、審査部(融資管理部)による審査が実効的に機能しなかったこと、監査部による形式的・外形的な内部監査により多数の不正行為や審査の機能不全が見過ごされたことなどが指摘されています。

金融庁としては、営業部門からの審査部の独立性の確保や、実効的な内部監査のための監査部の強化など、法令遵守態勢、経営管理態勢等に関する業務改善命令を出すことがまず考えられます。加えて、事案の悪質性や重大性にかんがみ、一部業務についての業務停止命令といった厳しい処分が十分想定されます」

●文書偽造・変造罪、同行使罪が問題に

ーーでは警察はどう立件するとみられるでしょうか

「報告書では『収益不動産ローンの延滞案件のほぼ全てで自己資金確認資料が架空・偽造であった』と認定されています。さらに、契約書の偽装のみならず、建物の検査済証・確認済証の偽装や、団体信用生命保険の加入申し込みにおける診断書の偽装も指摘されています。

これらの文書偽造・変造罪、同行使罪が問題となり、関与していた行員について立件される可能性があります。また、これらの行員が業者と癒着し、キックバックを受け取るなどして銀行の財産を毀損したことが認められれば、詐欺罪や背任罪の立件もありえます。

ただし、役員について特別背任罪が成立するかについては、報告書の内容からは、可能性は低いように思われます。なお、問題の経緯を知る役職員の恣意的な解雇・退職が銀行法上の検査忌避罪にあたりうるとして、金融庁がスルガ銀行に警告したという報道が本年5月にされたことは、記憶に新しいところです」

(弁護士ドットコムニュース)

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